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「総義歯」のつくり方 

ここが腕のみせどころ 義歯ができるまでのプロセス義歯、とくに総義歯などというと、ひどく年寄りくさい印象をいだきがちだが、現在の義歯はとても精巧にできているから、ちょっとみただけでは、自然の歯か義歯かまったくみわけがつかない。しかも、義歯をいれれば、ものを食べるたのしみがよみがえり、また健康増進にも役立つのだから、患者はできるだけ早い時期に歯科医の門をたたくべきだ。義歯の目的には、食べものの咀嚼、外観の美しさの回復、正しい発音の回復といったことがあげられるだろう。歯科医としても患者としても、こういった多様な目的を同時に完全に実現できるような義歯をつくることが、もっとものぞましいことなのである。総義歯をつくるのは、型さえとれば、それですぐにでもできあがるものだと思いこんでいる人が多いようだ。しかし、実際にはそんなにかんたんにはいかないのである。総義歯をつくるプロセスは、じつに複雑なのである。わたしたち歯科医が総義歯を完成させるまでには、どんな苦心をしているか、前ページの表でそれをみていただきたい。もちろんこのほかにも、患者の口腔やからだ全体の健康状態、義歯を直接ささえる顎堤のかたちや大きさ、あるいは顎堤がどの程度しっかりしているか、圧力がくわわると痛みを感じるか、患者には以前総義歯をつかった経験があるかどうかなども、わたしたちば厳密に検討するのである。また、総義歯を希望する患者の多くは年齢的には中年以降だから、既往症や現在の病気の有無を調べ、その結果によっては、全身疾患について専門医の協力をあおぎながら義歯をつくる作業をしていかなければならないという場合もある。たとえば、糖尿病といった代謝障害のある患者の場合は、顎堤の萎縮吸収が顕著だったりすることが多いし、また装着した義歯の刺激で潰瘍ができやすく、そのなおりもおそいことがある。さらに、唾液が変質していたり、異常に分泌がすくなかったりなどして、義歯を維持することがむずかしい場合もあるからだ。あるいは高年齢層に多い骨粗鬆症の患者の場合には、とくに骨のおとろえ方がひどいということもある。総義歯というものは、およそこういったプロセスをへて完成していくわけだから、当然来院回数は、すくなくとも五〜六回は必要である。