新婚旅行で喧嘩して別れてしまった例がある。新婦は言う。「うちのお父さんがうるさいと思ったら、それ以上にうるさい」。新郎は口紅のつけ方から、洋服から、趣味がいいの悪いのといちいち言うのが気に入らない。近ごろは女の方から離婚してゆく。しかし、結婚式を挙げておいて、すぐに別れるというのもどうか。ひとには、いろいろの性格があり、口うるさいというのは愛情があってのこと。一言にっこり笑って言えばいいのだ。「一度にはなかなかできそうもないけれど努力します」と。妻の着付けを手伝う夫というのもいる。それを楽しみにしている。私などは自分でろくに着物も着られないから、ひとが手伝ってくれれば嬉しいし、助かる。化粧も衣裳も教えてくれた方がいい。ところで私の夫は、何一つ手伝ってもくれず、何一つ批評がましいことは言ってくれなかった。こんなとき、性格が反対というのも長続きの原因の一つだったかもしれないと思う。とにかく相手と長い間暮すに耐えられないと思って離婚するのだろうけれど、そんなに早くあきらめず、暮してゆくうちに、相手が変わる楽しみをつくっていったらどうか。条件がいくら悪くても、このひとだったら一緒に苦労しましょう、と思うひともある。これが縁の不思議さであろうか。普通の無難な性格のひとがよいかと思うと、それでは物足りず、個性の強い方が、毎日喧嘩する方がおもしろいというひともある。喧嘩し、仲直りし、をくりかえす。私はとにかく長く続ければ続ける程、おもしろくなるのが結婚生活だと思っている。お互いに個性が強くて、相手を自分の思う通りにしたいと思っている夫婦があった。客の前でも言い争い、ときには物を投げあうこともある。見かねて私は言った。喧嘩なら外へいってやって下さい。すると険しい顔でにらみあっている夫婦の両方の顔が笑いに崩れた。「ひとの前でやって見せているのがおもしろい」夫婦喧嘩は犬も食わないという言葉があるけれど、私はまさにその実例をつきつけられて、私も笑ってしまった。この個性の強い同士の夫婦はときどき来客の前で、華々しく口論することで、胸にたまっていたうっぷんが晴れるのだという。「縁は異なもの味なもの」という言葉があった。