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「小学校教員心得」

わが国において学校教師の資質能力について公的に言及されたものの一つは、1881(明治14)年に文部省達として示された「小学校教員心得」である。これは、当時全国的に展開された自由民権運動に賛同し参加する教員を統制し、取り締まるために制定されたものであるが、第二次世界大戦後の教育改革の時まで存続し、わが国の学校教師の在り方に多大の影響を与えた。これには、まず前文の冒頭で「国家の隆盛」は、「普通教育の弛張」により、その普通教育の弛張は、「小学校教員の良否」による、つまり国家が盛んになるか衰えるかは小学校教員次第だとして、その役割の重大性が述べられる。そして、そこでは、小学校教員の役目として、普通教育の目的を達成し、人びとを立派な人物に育て職に就かせることによって、「尊王愛国ノ志気ヲ振起シ風俗ヲシテ淳美ナラシメ民生ヲシテ富厚ナラシメ以テ国家ノ安寧福祉ヲ増進スル」ことが挙げられている。言い換えると、小学校の教員は、普通教育の目的を達成することによって、国家の安寧福祉の増進という観点から、尊王愛国の意気込みを盛んにし、風俗を良くし、国民の生活を豊かにしなければならないとされる。この前文は、「小学校教員心得」の基本であるが、さらに、このような役目を果たすために、16項目にわたる心得が提示されている。とりわけ、その第1項には同心得の核心ともいえる内容が述べられている。まず「人ヲ導キテ善良ナラシムルハ多識ナラシムルニ比スレハ更ニ緊要ナリトス故ニ教員タル者ハ殊ニ道徳ノ教育ニカヲ用ヒ…」として、教員は生徒を「多識」にすることよりも「善良」にすることが大事で、したがって道徳教育に力を注ぐべきだとされる。つまり、ここでは、知育よりも徳育が重視されている。そして、その場合の「善良」の内容として、「皇室ニ忠ニシテ国家ヲ愛シ父母ニ孝ニシテ長上ヲ敬シ朋友ニ信ニシテ卑幼ヲ慈シ及自己ヲ重ンスル等凡テ人倫ノ大道」を挙げている。このような忠君、愛国、孝…といった徳目は、戦前のわが国の教育および国民道徳の基本理念を示した「教育勅語」の徳目に結びつくもので、わが国の教育の底流にずっと流れているものであるが、小学校教員は、そのような徳目に精通し、生徒の模範となって生徒を感化してゆかなければならないとされている。
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