コフィーアナンの着こなしを見ると、彼の体型を活かすために肩線はそれほど高くはない。けれども、その分、ラペル(襟)がやや広めになっていて、彼の鍛えられた胸部を美しく見せることに成功している。襟腰が高く襟が120度前後で開くワイドスプレッドのシャツ、つねに豊かなディンプル(ネクタイの結び目下にできる、えくぼ状の窪み)をつくるように締められたネクタイと相撲って、そのスーツ姿は完璧なものとなる。コフィーアナン国連事務総長のスーツ姿は、けっして装飾過剰なものではない。どこまでもクラシックで、むしろ‐立たないほどだ。それでいて彼の体型や姿勢、あるいは彼の地位といったことを支える存在となっている。この美しい着こなしは、政治リーダーたちが手本とすべき要素が見事に凝縮されている。ときおり袖口から覗くガーナのファンティ族に伝わる装身具さえも、素晴らしい着こなしにアクセントを加える。また、仕立ばかりでなく、素材である生地も溜息が出るほどだ。スーツはライトからチャコールまでのグレイとネイヴィーばかりだが、仔細に観察するとグレナカートチェックが施されていたり、あるいは桐密なヘリンボーンであったりする。遠目には無地に見えるのに、近づくと繊細さが浮かび上がるという趣向だ。ストライプスもじつに上品なものばかりが選ばれる。記憶を頼りに、ミラノに設けられたブリオーニのサロンでアナン仕様の生地を探したが、いずれも選びに選ばれたものであることがうかがえた。
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