僕はおばさんの顔を呆然と見つめてしまった。「あのなあ。あんた、いったい僕らになにをしてくれたっていうの」おばさんは僕らの後をついてきただけなのだ。僕らが筆談を繰り返し、何時に北京に着くのか、とか、運賃はいくらだと交渉しているところを、後ろから眺めていただけなのだ。最終的に切符を買った窓口も自分たちで探した。その最後になって、三十元せしめるってのは……。しかしおばさんはそんなことは意に介さないといった態で、駅前の雑踏のなかに消えていったのである。
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中国の客引きはこういう手を使うことが多い。僕らにしたら騙されている訳でもなく実害もないから、抗議のしようもないのだが、なにかこう後味が悪いのである。これでいいのか、と思ってしまうのである。それと同じようなことが、丹東港から乗ったタクシーで起きた。新たにふたりの客を乗せた車は、丹東に向けて出発したが、十五分ほど走ったところで、急に道の端に車を寄せた。ほかの乗客に倣って車を降りた。するともう一台のタクシーが近づいてきた。運転手は二言三言話すと、あっちの車に移ってくれと手で示し、新しいタクシーの運転手に金を渡したのだった。